リュート組曲1番ホ短調「プレリュード」は、前半が「パッサージョ」、後半は「フゲッタ(小規模なフーガ)」の構造で、それぞれ極めて興味深い内容になっています。
また「パッサージョ」は、ギターで演奏されるバッハ作品では稀で、どのようにその音楽を構築するかを経験する良い機会と言えます。
「パッサージョ」とは、「音から音へ、部分から部分へと【橋渡し】をする、速い音符の連なり」を指し、単なる旋律の一部ではなく、奏者の技量を見せたり、曲の緊張感を高めたりするために挿入される即興的・装飾的な走り書きのようなものです。
バッハは、当時の慣習であった「奏者の即興」を、自ら譜面に細かく書き込む(記譜する)スタイルの先駆者だったので、時代性を反映した貴重な記録とも言えます。
「パッサージョ」は、鍵盤楽曲に多くみられますが、『トッカータとフーガ ニ短調』や『半音階的幻想曲とフーガ』の冒頭で見られるような、鍵盤を上下する速いスケール(音階)やアルペジオ(分散和音)が典型的なパッサージョです。
ギターで、この「速い音符の連続」を弾きこなすには2種類の可能性があり、自分の適性に合わせ攻略する必要があります。
(1)ハンマリング・プリングを多用する
(2)速弾き出来るピッキング能力を磨く
これに取り組むことで、「得手、不得手に関わらず、そこに書かれた音符を演奏しなければならないクラシック音楽の宿命」に、どう対峙するか?、という根本的な姿勢と必要な技術が磨かれます。
後半の「フゲッタ」は、大部分は明確な2声部のポリフォニー(複声部音楽)なので、ポリフォニーの基礎を体験するのに好適。
音楽的にもテクニック的にも、中級から上級を望む頃合いに、一度本格的に取り組む価値の高い、素晴らしい教材であります。
そんなことより、単純に良い曲でかっこいいので、ともかく弾けるようになりたいなぁ、と思う曲であります。
BWV996~リュート組曲1番ホ短調からは、既に「ブーレ(CGS-13)」「アルマンド(CGS-63)」が販売中なので、合わせて楽しみたいですね。